コレステロール値が高いと言われたけれど…コレステロールの種類は?

年を重ねるにつれて健康診断の結果を見るのが気が重いという人も多いのでは?
春は歓送迎会やお花見など外食や会食の機会も増え、栄養の偏りを気にしている人もいるのではないでしょうか。

一方で、健康診断の結果を見ても医師や専門家の解説がないと詳しい部分まではわかりません。

例えば血液検査でわかる主な病気は貧血、肝臓の異常、腎臓の異常、脂質異常症、糖尿病などが挙げられますが、中高年と言われる世代はどこに注意すればいいのでしょうか?

今回は、内科医の佐藤留美(さとう・るみ)医師に、コレステロールの値の見方について伺いました。

HDLコレステロールとLDLコレステロールの違い

――健康診断の血液検査の項目を見ると、コレステロールに目がいくのですが、「HDLコレステロール」や「LDLコレステロール」など、コレステロールにも種類があるのですね。

佐藤留美医師(以下、佐藤):コレステロールは人間の体に存在する脂質の一種で、細胞膜やホルモン、胆汁酸を作るなどの重要な役割があります。食品から摂取されるほか、多くが糖質や脂肪酸から作られます。合成される量は体内で一定に調整されます。

――コレステロールと聞くと、悪者と思いがちですが、体に必要な物質なのですね。

佐藤:そうですね。

――「LDLコレステロール」と「HDLコレステロール」の違いを教えてください。

佐藤:LDLコレステロールは、肝臓で作られたコレステロールを全身へ運びます。増えすぎると、動脈硬化を起こして心筋梗塞や脳梗塞を発症させることもあるので、悪玉コレステロールとも言われます。基準範囲*は「60~119㎎/dL」です。

一方、HDLコレステロールは、余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す働きをします。動脈硬化を抑える役割があり、善玉コレステロールとも言われています。基準範囲*は、「40㎎/dL以上」です。

*将来、脳・心血管疾患発症しうる可能性を考慮した基準範囲

悪玉コレステロールを増やさないための生活習慣は?

――悪玉コレステロールを増やさないために日常生活で注意したほうがいいことを教えてください。

佐藤:油ものや糖分を控えて、食物繊維を多くとるようにしましょう。遺伝的な要因でLDLコレステロール値が高くなることもあります。そのため、痩せていて、油ものをほとんど口にしない方でも「コレステロールが高い」と診断されることもあります。そういう方は食生活を改善しても下がらないので、薬を処方することもあります。

また、食事の一例として、「スルフォラファン・グルコシノレート(SGS)を多く含むブロッコリーを食べた人は、通常のブロッコリーを食べた人と比べてLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が有意に低下した。」参1)という論文もあります。サプリメントを活用するのもいいですね。

そして、LDLコレステロール値を下げるためには運動も有効ですが、ランニングなどの激しい運動よりはウォーキングや散歩などの穏やかな運動がいいです。最低20分以上は歩きたいところです。

――激しい運動はあまりよくないのでしょうか?

佐藤:激しい運動は気持ちが高ぶってストレスがかかってしまうので、できればウォーキングなどの穏やかな運動がいいですね。

コレステロールと中性脂肪の違い

――コレステロールと中性脂肪の違いは何でしょうか?

佐藤:どちらも血液中に含まれる脂質なのですが、中性脂肪は人にとって重要なエネルギー源で3大栄養素の一つですが、とりすぎると体脂肪として蓄えられて肥満をまねき、生活習慣病を引き起こすので注意が必要です。

■ 参考サイト

厚生労働省e-ヘルスネット「コレステロール」
日本人間ドック学会

■参考文献

参1) Armah, C.N.; Derdemezis, C.; Traka, M.H.; Dainty, J.R.; Doleman, J.F.; Saha, S.; Leung, W.; Potter, J.F.; Lovegrove, J.A.; Mithen, R.F. Diet rich in high glucoraphanin broccoli reduces plasma LDL cholesterol: Evidence from randomised controlled trials. Mol Nutr Food Res 2015, 59, 918-926, doi:10.1002/mnfr.201400863.

<プロフィール>

佐藤留美医師
久留米大学医学部を卒業後、同大学病院や市中病院にて臨床医として研鑽を積む。大学院では感染症学の研究に励み、医学博士号を取得。臨床面では内科・呼吸器・感染症・アレルギーなどの専門医及び指導医となり、同大学関連の急性期病院にてCOVID-19の診療など第一線で活躍中。花粉症や喘息などアレルギー疾患の診療経験も豊富。その傍ら、現在は藤崎メディカルクリニックの副院長として地域医療にも取り組んでいる。

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