お酒の飲み過ぎ? 健康診断の血液検査にあるγ-GTP値って何?

年を重ねるにつれて健康診断の結果を見るのは重いという人も多いのでは?
新年度で会食やお酒を飲む機会も多く、特に肝機能について気になっている人もいらっしゃるかもしれません。

一方で、健康診断の結果を見ても医師や専門家の解説がないと詳しい部分まではわかりません

例えば血液検査でわかる主な病気は貧血、肝臓の異常、腎臓の異常、脂質異常症、糖尿病などが挙げられますが、中高年と言われる世代はどこに注意すればいいのでしょうか?

前回は内科医の佐藤留美(さとう・るみ)医師に、中年世代が健康診断で注意したほうがいいことや、血液検査で肝機能に関わるALT値とAST値について聞きました。今回は、血液検査のγ-GTP値について伺います。

γ-GTP値って何?

――前回は40代から意識したい健康診断の項目や生活習慣病について、肝臓の役割や肝機能の数値(ALT値、AST値など)について伺いました。今回はγ-GTP値について伺えればと思います。

佐藤留美医師(以下、佐藤):γ-GTPはガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(γ-Glutamyl TransPeptidase)の略で解毒作用を行う代謝酵素です。肝細胞が壊れると血液中に流れ出るので肝臓のダメージ度の指標となります。一般的なγ-GTP検査値の基準値としては、男性が50IU/l以下、女性が30IU/l以下とされます。参1)

肝臓から処理済みの老廃物は胆管を通して十二指腸に排泄されますが、胆道が胆石やがんなどによって詰まると、γ-GTPなどの酵素や老廃物が逆流して、血中の濃度が上がります。また、お酒の飲み過ぎのほかにも肥満によっても数値が上がるとされています。

――肝臓の数値が悪いと聞くと、お酒の飲み過ぎをイメージします。

佐藤:そうですね。アルコールが体内に入ると肝臓で分解され、「アセトアルデヒド」という悪酔いの原因物質になります。アセトアルデヒドが体内に蓄積することで、顔が赤くなったり、動悸や吐き気、頭痛を感じたりする原因になります。

ただ、それを分解する酵素は個人によって違います。ほとんど持っていない人はお酒に弱い人となりますが、どのくらいアルコールを分解する酵素を持っているかは遺伝によります。「生活改善で良くなるか?」と言ったらそうではありません。例えば、γ-GTPの数値が全く同じという2人の人がいたとしても、2人が全く同じ量のアルコールを摂取しているかと言ったらそうではありません。

飲酒のしすぎ、肥満に注意

――肝臓ケアのためにしたほうがいいことがあれば教えてください。

佐藤:前回もお話ししたとおり、健康診断による早期発見と病気だった場合は治療することにつきるのですが、飲酒のしすぎや肥満などは生活習慣の見直しで気を付けられることだと思うので、飲酒も自分が気持ちよく飲める量を把握して楽しく飲めるといいですね。

――前回と同様、「肝機能異常の男性がスルフォラファン・グルコシノレート (SGS) を含むサプリメントを継続的に摂取すると、肝機能マーカーであるALTやγ-GTPの数値が改善された」という論文参2)もあります。サプリをうまく取り入れるのも大事でしょうか?

佐藤:はい。SGSは、ブロッコリーに含まれている成分で、体内で変換されると、身体に備わる抗酸化力を高め肝臓における異物の排出を促進させる作用があるとされています。新芽状態のブロッコリースプラウトのほうが、多くのスルフォラファン・グルコシノレートを含んでいることも判明しています。もちろんサプリメントもあるので、食事でとるのが難しいという人はサプリで補うのもいいと思います。

■ 参考サイト

参1)厚生労働省e-ヘルスネット「γ-GTP」
カゴメ

■参考文献

参2)Kikuchi, M.; Ushida, Y.; Shiozawa, H.; Umeda, R.; Tsuruya, K.; Aoki, Y.; Suganuma, H.; Nishizaki, Y. Sulforaphane-rich broccoli sprout extract improves hepatic abnormalities in male subjects. World J Gastroenterol 2015, 21, 12457-12467, doi:10.3748/wjg.v21.i43.12457.

<プロフィール>

佐藤留美医師
久留米大学医学部を卒業後、同大学病院や市中病院にて臨床医として研鑽を積む。大学院では感染症学の研究に励み、医学博士号を取得。臨床面では内科・呼吸器・感染症・アレルギーなどの専門医及び指導医となり、同大学関連の急性期病院にてCOVID-19の診療など第一線で活躍中。花粉症や喘息などアレルギー疾患の診療経験も豊富。その傍ら、現在は藤崎メディカルクリニックの副院長として地域医療にも取り組んでいる。

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