活性酸素がたくさん発生しやすい臓器は? 酸化ストレス予防のために大事なこと

肝臓は、消化管から取り込んだ栄養を利用しやすい形に変えたり、毒物を分解したり、体内の物質のバランスを維持したりなど、生命を支えるために重要な多くの働きを担っています。

肝臓は体の中で最も大きな臓器で500種類以上もの働きがあるとされています。

たくさんの機能を担う肝臓。体を動かすためのエネルギーを生み出すのも肝臓ですが、その活動で大量の酸素を消費するため、活性酸素がたくさん発生しやすい臓器でもあります。活性酸素を除去する抗酸化力が不足すると、肝臓の機能が低下し、疲れやすくなったりします。まさに肝心要の臓器と言えますが、今回は活性酸素が肝臓や体に及ぼす影響についてご紹介します。

活性酸素って何? 酸化ストレスとは?

活性酸素とは、呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部が、通常よりも活性化された状態になることを指しますが、ヒトを含めた哺乳類では、取り込んだ酸素の数%が活性酸素に変化するとされています。

活性酸素は、免疫機能や感染防御などの重要な役割を担っている一方で、過剰に発生すると自らの細胞を攻撃する「酸化ストレス」という状態を引き起こします。活性酸素によって細胞が傷つけられると、細胞が変異したり、死滅します。そして動脈硬化や老化、免疫機能の低下などを引き起こします。

食事、睡眠、適度な運動…酸化ストレス対策は?

酸化ストレスへの対応はどうすればよいのでしょうか?
活性酸素は、ストレスや喫煙、激しい運動、多量のアルコール摂取、紫外線なども活性酸素が増える原因とされています。そのため、バランスが取れた食事や適度な運動、十分な睡眠をとることが大事になってきます。

また、活性酸素が細胞を傷つける攻撃から身を守るため、私たちの体には「抗酸化力」が備わっています。抗酸化とは、体の中をさびつかせないことを言いますが、活性酸素は体内の酵素によって分解されますが、活性酸素の生成量が多いと分解が追いつきません。そのため、食事を通じて体の外から「抗酸化物質」をとることで、抗酸化酵素の働きを助けることにつながります。

抗酸化物質の種類は?

抗酸化物質としては、ポリフェノールやカロテノイドが知られています。ポリフェノールには、ブルーベリーやぶどうに含まれるアントシアニン、大豆に含まれるイソフラボン、緑茶に含まれるカテキン、ブロッコリーや玉ねぎに含まれるケルセチン、柑橘系果実の皮に含まれるヘスペリジンなどがあります。

カロテノイドには、緑黄色野菜や果物など多くの食品に含まれるβ-カロテンやリコピン、ほうれん草やケールに含まれるルテイン、えびやかになど甲殻類、さけ・ますなど魚類がもつアスタキサンチンなどが有名です。

また、「健康な成人男女のうち中高年(45ー65歳)において、スルフォラファングルコシノレートを含むサプリメントを24週間摂取した方のALT値がプラセボサプリメントを摂取した方と比べて改善された」参1)、 さらに、「ALT値がやや高めの中高年の方においても、SGS(スルフォラファン・グルコシノレート)を含むサプリメントを24週間摂取した方では、プラセボサプリメントを摂取した方と比べてALT値が改善された」参2)という論文があります。

ALTとは、肝臓に多く存在する酵素で、肝臓の状態をはかるバロメーターの一つで、活性酸素が肝細胞を破壊すると血中にALTが漏れ出し、上昇します。

スルフォラファン・グルコシノレートは、ブロッコリーの新芽、キャベツ、カリフラワーなどに含まれている成分で、米国を代表する医学校であるジョンズ・ホプキンス医科大学のポール・タラレー博士らにより、健康効果が期待される成分としてブロッコリーから発見されました。解毒作用、抗酸化作用、抗炎症作用などを示すことから、さまざまな疾病の予防・改善に有効である可能性が多数報告されています。参3)

酸化ストレス予防のために、上記で述べた生活習慣の改善のほか、抗酸化物質を含む食べ物を日頃からとることも有用と言えます。

■ 出典・参考文献

参1) 菊池真大, 青木雄大, 相澤宏一, 菅沼大行, 西崎泰弘. 健康成人の肝機能に対するブロッコリスプラウト抽出物含有サプリメントの有効性検証 - 多施設無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験 -. 薬理と治療 2018, 46, 81-95.

参2) Satomi, S.; Takahashi, S.; Yoshida, K.; Shimizu, S.; Inoue, T.; Takara, T.; Suganuma, H. Effects of broccoli sprout supplements enriched in glucoraphanin on liver functions in healthy middle-aged adults with high-normal serum hepatic biomarkers: A randomized controlled trial. Frontiers in Nutrition 2022, 9, doi:10.3389/fnut.2022.1077271.

参3) Yagishita, Y., et al. (2019). "Broccoli or Sulforaphane: Is It the Source or Dose That Matters?" Molecules 24(19).

厚生労働省「知って、肝炎」HP
e-ヘルスネット「活性酸素と酸化ストレス」

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