便秘と酸化ストレスの関係は? 予防のための食習慣やライフスタイル

食べ物をおいしく食べることができ、お通じも順調でよく眠れること、このことは健康的な生活を支える条件としての一つというのは、みなさん納得するところなのではないでしょうか。

しかし、毎日の忙しい生活で食生活が不規則になったり、バランスが偏ったり、運動不足やストレス、そして高齢化が進んだことにより、便秘を訴える人が増加する傾向にあるそうです。

「慢性便秘症診療ガイドライン2017」によると、便秘は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。

便秘の原因はさまざまですが、「軽い便秘傾向のある人がスルフォラファン・グルコシノレ―ト(SGS)を高含有するブロッコリースプラウトを摂取することで便通が改善した」という論文参1)も。ブロッコリースプラウトに含まれるSGSには体内の抗酸化作用を高める働きがあります参2)

そこで今回は内科医の佐藤留美(さとう・るみ)医師に、酸化ストレス便秘についてお話を伺いました。

酸化ストレスとは?

――まずは、酸化ストレスとは一体どういうことを指すのかお聞かせください。

佐藤留美医師(以下、佐藤):体内で活性酸素が過剰に作られ、細胞やDNAを傷つけ、疾病や老化などの障害を引き起こすことを指します。酸化ストレスの原因は紫外線や大気汚染、放射線、喫煙、酸化された物質の摂取などです。

――活性酸素というのは?

佐藤:活性酸素は、呼吸によって取り込まれた酸素の一部が、通常よりも活性化された状態になることを指します。活性酸素は細胞伝達物質や免疫機能として働く一方で、増えすぎると細胞を傷つけて、がんや心血管疾患や生活習慣病の要因になります。

――酸化ストレスは便秘とも関係があるのでしょうか?

佐藤:酸化ストレスは腸や筋肉の組織細胞にもダメージを与えます。腸は栄養素を体内へ吸収する役割があるのですが、便秘の人は便秘でない人に比べて、腸からのビタミンB2やビタミンB6、葉酸の吸収効率が低いことがわかってきています。吸収が悪くなると栄養素が十分に体内にいきわたらず、老化やさまざまな疾患の原因となる酸化ストレスが体内で増えると報告されています。

便通改善のための食生活は?

――便秘改善のための食生活を教えてください。

佐藤:腸の中はいろんな腸内細菌がいるのですが、善玉菌を含む食品、キムチやヨーグルトを多く摂取することや、善玉菌のエサとなるオリゴ糖を含む食品、きな粉やごぼう、玉ねぎを意識して摂取するといいと思います。あとは食物繊維ですね。先ほどのごぼうやほうれん草、ジャガイモなどがおすすめです。

また、便秘は酸化ストレスと関係があるということで、活性酸素を除去する働きがある、抗酸化力のある食べ物の摂取も意識しましょう。ブロッコリーなどの緑黄色野菜や緑茶、玄米、全粒小麦などです。玄米と全粒小麦は食物繊維も多く含んでいます。

――便秘予防のために日常生活で気をつけたほうがいい習慣について教えてください。

佐藤:よく言われていることですが、規則正しい生活や適度な運動、水分をこまめにとることですね。食事はなるべく決まった時間に三食とりましょう。便秘は自律神経の乱れにもかかわってくるので、自律神経の乱れをなくすためにも決まった時間に食べるのが大事です。

あとは、便意をもよおしたときに我慢しないというのも大切です。便意を我慢してその場をやり過ごしてあとでトイレに行ってもいざ出そうとすると出ないということもあります。なので、トイレに行きたいときに確実に行く、我慢は極力しないというのは大事です。

■ 参考サイト

参1) Yanaka, A. (2018). "Daily intake of broccoli sprouts normalizes bowel habits in human healthy subjects." J Clin Biochem Nutr 62(1): 75-82.

参2) Fahey, J. W. and P. Talalay (1999). "Antioxidant functions of sulforaphane: a potent inducer of Phase II detoxication enzymes." Food Chem Toxicol 37(9-10): 973-979.

e-ヘルスネット「便秘と食習慣」

https://www.murakamifarm.com/about/functional/sulforaphane/report/

e-ヘルスネット「活性酸素と酸化ストレス」

<日本農芸化学会(3月27日~3月30日)にて発表予定>便秘はいくつかの栄養素の吸収効率を低下させるとともに、老化・がんの原因となる酸化ストレスを高める可能性が明らかに

・日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会編:慢性便秘症診療ガイドライン2017. 南江堂, 東京. 2017

<プロフィール>

佐藤留美医師
久留米大学医学部を卒業後、同大学病院や市中病院にて臨床医として研鑽を積む。大学院では感染症学の研究に励み、医学博士号を取得。臨床面では内科・呼吸器・感染症・アレルギーなどの専門医及び指導医となり、同大学関連の急性期病院にてCOVID-19の診療など第一線で活躍中。花粉症や喘息などアレルギー疾患の診療経験も豊富。その傍ら、現在は藤崎メディカルクリニックの副院長として地域医療にも取り組んでいる。

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