2026年度から、消費量が多く、国民生活上の重要性が高いとして位置付ける「指定野菜」に追加されることになったブロッコリー。栄養素などいろいろな面で注目されていますが、実は筋トレの効果をあげる野菜としても話題になっています。
ブロッコリーが筋トレ用食材としても人気の理由について、内科医の佐藤留美(さとう・るみ)医師に聞きました。
――筋力の向上や体形の維持のために筋トレをする方も多いですが、ブロッコリーが筋トレ用食材として人気を集めています。その理由を教えてください。
佐藤留美医師(以下、佐藤):筋トレは、皆さんもご存じのとおり、筋肉をつくるためのトレーニングのことです。筋肉をつくるためにはタンパク質が欠かせません。そのほかにも糖質、脂質、ビタミン、ミネラルもバランスよく摂ることが不可欠です。そのための栄養素が豊富に含まれているのがブロッコリーです。
ブロッコリーには野菜に含まれるビタミン類のほとんどを含んでいます。参1)
ビタミンは動物の体内で合成されないか、合成されても必要量を満たさないため、食品から摂取する必要があります。ブロッコリーは特にビタミンCの含有量が抜群です。タンパク質をアミノ酸に変換して代謝をサポートするビタミンB6も含まれています。細胞や神経、筋肉が正常に機能するために必要なミネラルであるカリウムも多く含まれています。
――カリウムなどのミネラルも大事なのですね。
佐藤:カリウムは電解質(水に溶けると陽イオンと陰イオンに分かれる物質)で、細胞の浸透圧を調整する作用があります。筋肉の収縮に大きく関わってきます。
まとめると、タンパク質は筋肉の大もとの材料になるのですが、糖質や脂質は体を動かすためのエネルギー源になります。ビタミンB群もエネルギー源です。ビタミンDは筋肉の量や力強さに関わってくるので、タンパク質をメインにそうした栄養素をくまなく摂取することが大事です。
――ブロッコリーのほかにおすすめの食材はありますか?
佐藤:そうですね、ブロッコリーのほかには豚肉、鶏肉、青魚、かぼちゃ、さつまいも、ジャガイモ、チーズ、大豆製品などでしょうか。
――摂取するタイミングは?
佐藤:筋トレを行う数時間前に食べるといいですね。筋トレをした後に食事を摂ることになると、筋トレを空腹状態ですることになります。空腹状態で筋トレをすると、エネルギー源が不足していることになり、筋肉の中のタンパク質が分解されてエネルギー源として利用されることになるので、食事を済ませてから筋トレをするのがおすすめです。
――ブロッコリーならお弁当に入れて持ち運びもできるのでいいですね。ブロッコリーの調理方法としておすすめはありますか?
佐藤:ブロッコリーに含まれる水溶性のビタミンやカリウムは水に溶けやすいので、ゆですぎないで炒め物にしたり、電子レンジで加熱したりするのがおすすめです。ブロッコリーはゆでると49%カリウムを損失しますが、電子レンジの加熱ではほぼ損失しません。参2)また、スープに入れれば煮込んでもスープのお汁に栄養素が溶けこむのでスープとしていただくのもおすすめです。
――最近はスープジャーでスープを持ち運びできるのでお弁当にもぴったりですね。例えば、ブロッコリーと食べ合わせの良い食材はありますか?
佐藤:個人的におすすめしているのが、鶏のささみですね。タンパク質が豊富に含まれているので、お肉と合わせるのが良いかと思われます。
■参考文献
参1)
『きちんとわかる栄養学』(西東社/著:飯田薫子 寺本あい)
参2)
『新 栄養の教科書 』(新星出版社/著:大久保 研之、深津 章子)
<プロフィール>
佐藤留美医師
久留米大学医学部を卒業後、同大学病院や市中病院にて臨床医として研鑽を積む。大学院では感染症学の研究に励み、医学博士号を取得。臨床面では内科・呼吸器・感染症・アレルギーなどの専門医及び指導医となり、同大学関連の急性期病院にてCOVID-19の診療など第一線で活躍中。花粉症や喘息などアレルギー疾患の診療経験も豊富。その傍ら、現在は藤崎メディカルクリニックの副院長として地域医療にも取り組んでいる。