生活習慣病の予防と早期発見のために…中高年が健康診断で意識したいこと

年を重ねるにつれて健康診断の結果を見るのは気が重いという人も多いのでは?

そこで、今回は内科医の佐藤留美(さとう・るみ)医師に、中高年が健康診断で意識したいことを伺いました。

生活習慣病の予防と早期発見

――中高年が健康診断でチェックするポイントを教えてください。

佐藤留美医師(以下、佐藤):40歳を越えると、高血圧症、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病が増加する年代です。

生活習慣病とは、食事や運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が深く関与し、それらが発症の要因となる疾患の総称です。日本人の死因の上位を占める、がんや心臓病、脳卒中は、生活習慣病に含まれます。

生活習慣病の予防と早期発見、治療に重要なのが、「特定健診・特定保健指導」や「がん検診」などの定期的な受診です。初期の生活習慣病は自覚症状がないことが多いので、定期的な健康診断は大事です。

特定健診、特定保健指導って?

――健康診断の結果を見るのが怖いと思ってしまっていたのですが、予防や早期発見のためにも大事なのですね。「特定健診」とは?

佐藤:「特定健康診査(特定健診)」も「特定保健指導」も40歳から74歳の被用者保険(健康保険組合や全国健康保険協会など)や国民健康保険の加入者を対象として実施されています。

特定健診は、腹囲測定などメタボリックシンドロームに着目した健診を行います。

――腹囲を測るのは特定健診だったのですね。

佐藤:腹囲はへその高さで計る腰回りの大きさで、内臓脂肪の蓄積の目安となります。男性ウェストサイズが85センチ以上、女性は90センチ以上としています。

内臓脂肪の蓄積のほか、高脂血症・高血圧・高血糖の3つの項目のうち、2つ以上を満たしているとメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)と診断されます。

3つの項目の基準は、脂質異常(中性脂肪 150mg/dl以上、HDLコレステロール 40mg/dl未満のいずれかまたは両方)、血圧高値(収縮期血圧 130mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上のいずれかまたは両方)、血糖高値(空腹時血糖値 110mmHg以上)です。

内臓脂肪の蓄積は、更年期によっても助長され、加齢とともにメタボリックシンドロームと診断される割合も増えていることが報告されています。

――「特定保健指導」はどんな人にされるのでしょうか?

佐藤:特定健診の結果から、生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善による効果が多く期待できると判定された人に対して行われる健康支援で、一人ひとりの身体の状況や生活環境などに合わせて、医師、保健師、管理栄養士などの専門家が生活習慣を見直すためのサポートをします。

健康診断と人間ドックの違い

――健康診断と人間ドックの違いはあるのでしょうか?

佐藤:健康診断は、自治体や職場などで実施されることが法律で義務付けられています。1年に1回職場で実施される一般健診のほか、先ほど申し上げた特定健康診査、がんの早期発見を目的した対策型がん検診などがあります。

人間ドックも健康診断の一部と言えますが、法的な義務はなく個人の意思で受けるより検査項目が多い健康診断で、基本的に費用は自費ですが、職場によっては補助が出る場合もあります。

――オプション検査の選び方はどんなふうに選べば良いのでしょうか?

佐藤:基本検査項目だけでは網羅できない疾患の有無やリスクを補完するために、疾患ごとに精度の高い検査を受けられるのが「オプション検査」です。人間ドックでより精度の高い結果を得るには、自分に合ったオプション検査を選ぶことが重要です。

オプション検査は、年齢、性別、生活習慣、既往歴、家族歴、気になる部位などをもとに選ぶことになりますので、どういったオプション検査を受けるかどうか迷った場合は、受診する機関のスタッフに直接お尋ねされてみてください。

■ 参考サイト

厚生労働省 e-ヘルスネット「生活習慣病とは?」
厚生労働省 e-ヘルスネット「ウエスト周囲径」
厚生労働省 e-ヘルスネット「特定健康診査・特定保健指導」

<プロフィール>

佐藤留美医師
久留米大学医学部を卒業後、同大学病院や市中病院にて臨床医として研鑽を積む。大学院では感染症学の研究に励み、医学博士号を取得。臨床面では内科・呼吸器・感染症・アレルギーなどの専門医及び指導医となり、同大学関連の急性期病院にてCOVID-19の診療など第一線で活躍中。花粉症や喘息などアレルギー疾患の診療経験も豊富。その傍ら、現在は藤崎メディカルクリニックの副院長として地域医療にも取り組んでいる。

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