スルフォラファン・グルコシノレートと糖尿病の関係は? 糖尿病予防のために意識したいこと

スルフォラファン・グルコシノレートと糖尿病の関係は?

2026年度から、国民生活上の重要性が高いとして位置付ける「指定野菜」に追加されることになったブロッコリー。その理由の一つに、ブロッコリーの出荷量が毎年増加傾向にあることも挙げられています。

ブロッコリーは野菜に含まれるビタミン類のほとんどを含み、カルシウムや鉄などのミネラルも豊富に含まれています。また、最近はファイトケミカル(植物に含まれる天然の化学物質)の一種で、抗酸化機能を特徴とする「スルフォラファン・グルコシノレート」が含まれていることでも注目されています。特に、新芽である発芽初期のブロッコリースプラウトには、成熟したブロッコリーよりも約20倍もの高濃度のスルフォラファンが含まれているとされています参1)

スウェーデンのイェーテボリ大学のアンデルス ローゼンガレン氏らがルンド大学糖尿病センターと共同で行った研究で「スルフォラファン・グルコシノレートを含むブロッコリースプラウト抽出エキスを摂取した2型糖尿病患者は、血糖コントロールが改善した」こと参2) や、イランのシャヒードベヘシュティ大学のパルヴィン・ミルミラン氏らの研究で「スルフォラファンを高含有するブロッコリースプラウト粉末を摂取することで2型糖尿病患者のインスリン抵抗性を改善した」こと参3)が報告されています。

糖尿病の予防にも期待できそうですが、内科医の佐藤留美(さとう・るみ)医師に糖尿病予防について伺いました。

糖尿病とは?

――まずは糖尿病とはどんな病気なのかから教えてください。

佐藤留美医師(以下、佐藤):糖尿病は、インスリンの作用不足により高血糖が慢性的に続く病気で、1型糖尿病と2型糖尿病があります。1型は、自己免疫の異常によりインスリンを分泌する膵臓のβ(ベータ)細胞が壊れ、インスリンが適切に分泌されなくなることで高血糖状態になる病態です。

2型は、インスリンの作用不足により血糖値が慢性的に高くなる病態です。インスリン分泌が低下している場合とインスリンの働きが悪くなっている場合(インスリン抵抗性)があります。その原因として、遺伝因子と環境因子(肥満、運動不足、脂質摂取量の増加、不規則な食生活など)が挙げられます。

――糖尿病と血糖値の関係を教えてください。

佐藤:インスリンは膵臓のβ細胞で作られるホルモンで、血糖値を下げる働きがあります。2型糖尿病では、血糖値をコントロールすることが大事になってきます。

――生活習慣というのは?

佐藤:暴飲暴食、運動不足などですね。運動はできれば酸素を体内に取り入れることでエネルギー消費につながりやすい有酸素運動がおすすめです。

糖尿病にならないための食事は?

――糖尿病を予防する上で、食事で意識したいことを教えてください。

佐藤:野菜や果物をバランスよく食べることと、特に和食は塩分が多いのでそこも意識したほうがいいでしょう。塩分が高いと血圧が上がりやすいので糖尿病の発症につながることも考えられます。油もオリーブオイルを使うなど、いわゆる「地中海食」(イタリアやスペイン、モロッコなど地中海沿岸の国々で食べられている伝統的な料理)を意識すると良いかもしれません。

――果物というと果糖も気になるのですが……。

佐藤:おっしゃる通り、果物には果糖が含まれていますがビタミンも豊富に含まれています。できれば、エネルギーを消費する朝や昼間に食べるなど、タイミングを意識すると良いと思います。夜に食べると体内に蓄積されてしまいます。

スルフォラファン・グルコシノレートと糖尿病の関係は? 食べる順番も意識して

――ブロッコリーに含まれているスルフォラファンは糖尿病の改善に期待できるのでしょうか?

佐藤:スルフォラファン・グルコシノレートは、インスリンの働きや分泌を悪くして糖尿病を悪化させるタンパク質を減らすという研究結果参4)も示唆されておりますので、期待できるのではないかと思います。

――ほかに意識したほうが良いことはありますか?

佐藤:先ほど野菜をとるようにとお伝えしたのですが、簡単に申し上げますと、血糖値を急に上げるのが良くありません。なので、食事の順番を意識してみてください。例えば、野菜を先に食べることで血糖値は緩やかに上昇します。逆に、お肉や炭水化物を先に食べてしまうと血糖値が急激に上昇するので、まずは野菜を先に食べて汁物を食べる。その後にお肉などのメインを食べてご飯を食べるなど、順番を意識すると良いと思います。

■ 参考サイト・文献

参1) 『食べてガンを防ぐスプラウト健康法』(河出書房新社/著・大澤 俊彦)

参2) Sulforaphane reduces hepatic glucose production and improves glucose control in patients with type 2 diabetes

参3) Bahadoran, Z., et al. (2012). "Effect of broccoli sprouts on insulin resistance in type 2 diabetic patients: a randomized double-blind clinical trial." Int J Food Sci Nutr 63(7): 767-771.

参4) Sulforaphane decreases serum selenoprotein P levels through enhancement of lysosomal degradation independent of Nrf2
著者: Xinying Ye, Takashi Toyama*, Keiko Taguchi, Kotoko Arisawa, Takayuki Kaneko, Ryouhei Tsutsumi, Masayuki Yamamoto and Yoshiro Saito*. *
責任著者:東北大学大学院薬学研究科 教授 斎藤 芳郎、講師 外山 喬士 掲載誌:Communications Biology

<プロフィール>

佐藤留美医師
久留米大学医学部を卒業後、同大学病院や市中病院にて臨床医として研鑽を積む。大学院では感染症学の研究に励み、医学博士号を取得。臨床面では内科・呼吸器・感染症・アレルギーなどの専門医及び指導医となり、同大学関連の急性期病院にてCOVID-19の診療など第一線で活躍中。花粉症や喘息などアレルギー疾患の診療経験も豊富。その傍ら、現在は藤崎メディカルクリニックの副院長として地域医療にも取り組んでいる。

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