人生100年時代と言われ、第二の人生やセカンドキャリアという言葉もさまざまな場面で目にすることが多くなりました。自分らしい人生を送るために、健康寿命への関心も高まっています。
平均寿命は「0歳における平均余命」を指し、2019年の平均寿命は男性が81.41歳、女性が87.45歳参1)、一方で「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を指す健康寿命は、男性が72.68歳、女性が75.38歳参2)です。健康寿命と平均寿命の差をなるべく縮小することが社会的な課題と言っても過言ではなく、老化をなるべく遅らせることがカギとなっています。
まず、「老化」とは何でしょうか? 老化とは、加齢に伴って身体や心の機能が低下することを指します。一般的に老化は20代から始まり、40代以降から進行スピードが加速するとされています。参3)
老化の一因として活性酸素が引き起こす「体のサビ」が一因とされています。
活性酸素とは、私たちが普段取り込んでいる酸素から発生して、体内の代謝過程においてさまざまな成分と反応し、過剰になると細胞障害をもたらします。生物には、これを除去して細胞を守る抗酸化酵素やダメージを受けたDNAを修復する機能が備わっていますが、抗酸化酵素は40代から減少し、DNAのミスコピーが起こりやすくなります。そしてDNAの損傷が蓄積されると、遺伝子の働きの変化や体のエネルギー産出工場であるミトコンドリアの機能不全、栄養素を取り込む力の低下が起き、さまざまな原因が重なって老化がさらに進行することになります。参3) 参4) 参5)
老化を遅らせる方法として、食習慣や運動習慣の改善、ストレスの軽減などが挙げられますが、活性酸素の流れで言うと、抗酸化物質をとることも老化を遅らせる対策の一つとして挙げられます。参6)
抗酸化物質とは、活性酸素の発生やその働きを抑制したり、活性酸素そのものを取り除く物質を指します。
抗酸化物質の代表的なものには、ビタミンA・C ・E、ポリフェノール、カロテノイド、イオウ化合物などがあります。
ビタミンAは食品中にβ-カロテンとして多く含まれます。含まれている食品としては、緑黄色野菜(にんじん、かぼちゃ)、さつまいもなどです。ビタミンCはジャガイモや赤ピーマン、ブロッコリー、キウイフルーツ、ビタミンEは植物油やナッツなど、脂質を多く含む食品に多く含まれています。ビタミンEはほかの抗酸化成分(β-カロテンやビタミンCなど)と一緒にとることで、互いに酸化を防ぐ効果が期待できます。
ポリフェノールは植物の色素や苦みの成分で、赤ワインやごま、大豆などに含まれています。カロテノイドは黄色、橙色、赤色の色素成分で野菜や果物、海藻などに多く含まれています。イオウ化合物は硫黄を含む化合物の総称で、ニンニクやネギ、アブラナ科の野菜に含まれています。
中でも野菜に含まれるビタミン類のほとんどを含み、特にビタミンCの含有量が多い野菜がブロッコリーです。ブロッコリーは手軽に調理でき、その栄養価の高さからも近年消費が大きく伸びた野菜で、2026年には「指定野菜」に追加され、市場に安定して供給されるようになる見込みです。
ブロッコリーは、抗酸化作用のあるビタミン類だけでなく、近年注目される「スルフォラファン・グルコシノレート」を含有しています。スルフォラファン・グルコシノレートはイオウ化合物の一種で、抗酸化機能を高める特徴があります。ブロッコリーのほか、ブロッコリーの新芽であるブロッコリースプラウトにも豊富で、ブロッコリーの20倍ものスルフォラファン・グルコシノレートが含まれています。ぜひ、食卓に上げる頻度を高めてみてはいかがでしょうか?
■ 参考サイト
・参1)
厚生労働省「令和元年簡易生命表の概況」
・参2)
厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」
・参3)
「『100年ライフ』のサイエンス」(日経BP/樂木 宏実(監修))
・参4)
Cell. 2013 Jun 6;153(6):1194-217.
・参5)
Nature. 2019 Jul;571(7764):183-192.
・e-ヘルスネット「活性酸素と酸化ストレス」
■ 参考文献
参6)
『今と未来がわかる 老化の科学』(ナツメ社/監修:中西真、 新井康通)
『一生役立つ きちんとわかる栄養学』(西東社/著:飯田薫子 寺本あい)
『新 栄養の教科書』(新星出版社/著:大久保研之、深津章子)
<プロフィール>
有馬美穂
ライター。2004年早稲田大学卒業。『VERY』をはじめ、さまざまな雑誌媒体等で主にライフスタイル、女性の健康、教育、ジェンダー、ファッションについての取材執筆を行う。