今回は肝臓と疲労の関係について、内科医の佐藤留美(さとう・るみ)医師にお話を伺いました。
――肝臓というとアルコールをイメージして、「私はお酒をそんなに飲まないから大丈夫」と思ってしまうのですが、肝臓の働きを教えてください。
佐藤留美医師(以下、佐藤):肝臓は人間の体内で最大の臓器で、消化管から取り込んだ栄養を利用しやすい形に変えたり(代謝作用)、アンモニアやアルコールなど体にとって有害な物質を分解して無毒化したり(解毒作用)、脂肪の消化や吸収を助ける胆汁を作ったり、体内の物質のバランスを維持したりなど、生命を維持するための重要な役割を担っています。
よく知られているように、お酒の飲み過ぎで肝臓の機能は低下しますし、暴飲暴食や疲れ、睡眠不足、運動不足、ストレスも肝臓機能の低下につながります。逆に筋トレをし過ぎたり、激しい運動をすると体の中にアンモニアを産生してしまうので適度な運動を心がけましょう。
怖いのは肝臓は「沈黙の臓器」といわれているように、心臓や胃のように「痛い」などの自覚症状はありません。
――疲労も肝臓と関係しているのでしょうか?
佐藤:肝臓は代謝や解毒などの機能を担っているので、肝臓のエネルギー代謝が鈍ると肝機能が低下し、疲労状態になる可能性はあります。
――例えば、お酒を飲み過ぎたり、やけ食いもしないけれど、長時間労働で疲れていると感じているのは「肝臓に負担がかかっている」といえるのでしょうか?
佐藤:肝機能が低下するとエネルギー不足になって全身に疲労感を感じることにつながります。なので、お酒を飲み過ぎていないから大丈夫というわけではないですね。
――肝臓をいたわるために摂ったほうがいい食材などはありますか?
佐藤:タンパク質は肝臓の細胞を再生するために重要な役割を果たしているので、肉、魚、大豆製品、卵製品などをバランスよく摂取することが大切になります。しじみに含まれるオルニチンも肝臓に良いとされています。
また、肝臓の機能が低下するとビタミンを蓄える能力が落ちてしまうので、ウナギやレバーに含まれるビタミンA、ごまなどに含まれるビタミンE、豚肉、ピーナッツなどに含まれるビタミンB1、牡蠣(かき)やチーズに含まれるビタミンB12、ブロッコリーやいちごなどに含まれるビタミンCを積極的に摂りましょう。
ブロッコリーといえば、ブロッコリーの新芽に含まれるスルフォラファン・グルコシノレートは抗酸化作用と肝臓における解毒分解を促進させる作用があると考えられています。なのでそういった食材を摂るのもおすすめです。
■ 参考文献
『一生役立つ きちんとわかる栄養学』(西東社/著:飯田薫子 寺本あい)
<プロフィール>
佐藤留美医師
久留米大学医学部を卒業後、同大学病院や市中病院にて臨床医として研鑽を積む。大学院では感染症学の研究に励み、医学博士号を取得。臨床面では内科・呼吸器・感染症・アレルギーなどの専門医及び指導医となり、同大学関連の急性期病院にてCOVID-19の診療など第一線で活躍中。花粉症や喘息などアレルギー疾患の診療経験も豊富。その傍ら、現在は藤崎メディカルクリニックの副院長として地域医療にも取り組んでいる。