快便はいつもの食事に無理なく工夫を。ブロッコリースプラウトの上手な使い方

突然ですがみなさん、便秘で悩んでいませんか?

実は日本において便秘に悩む人々は年々増加傾向に。2022年の国民生活基礎調査(※)によれば、日本人で便秘に悩まされている方の割合は、男性で40人に1人(2.47%)、女性で20人に1人(5.06%)。65歳以降は男女ともに2~3倍増加する傾向にあります。

そして便秘は大人だけの問題ではありません。特定非営利活動法人日本トイレ研究所が2023年に調査したデータ(※)によれば、小学生の4人に1人(26.3%)が便秘が疑われる児童であることが判明しています。つまりこの状況をふまえれば、便秘は特定の年齢・性別層だけに限った悩みではなく、どんな世代であっても状況に応じて対策をしていくことが有意義であると考えられます。

そこで今回は、便秘を予防・対策するための基本情報を整理しながら、最近明らかになった便秘改善に関する研究データをご紹介。毎日の食事で無理なく取り入れられるコツをご案内していきたいと思います。

便は、食事の総決算。バランスの取れた食事が大切

便秘は多くの場合、大腸の蠕(ぜん)動運動の低下や便意の低下などによって起こります。これらを引き起こす原因は、日々の食事や生活習慣、ストレスなど様々なことが関係していると言われていますが、症状改善のために比較的対策しやすいのは、「食事」ではないでしょうか。

そこでまずは便と食事に関する正しい基本知識が重要になります。「便秘にはとにかく食物繊維」というイメージを持つ人は少なくありませんが、実は食物繊維だけを意識しても解決しないことがあります。そもそも便秘にならないためには、食事全体の中身が重要で、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。はじめに三大栄養素が便に及ぼす働きを覚えておきましょう。

  • ・たんぱく質は便をかたくする
  • ・糖質は便をやわらかくする
  • ・脂質は食物のすべりをよくする

例えば、砂糖や脂肪を控えてたんぱく質に偏った食事をしている人は便がかたくなるのは当たり前。自分の便の状況を確認して、食事バランスを変えてみることは大いに有効です。また先述の通り、食物繊維ばかり摂り過ぎて、かえっておなかが張って苦しくなる場合があり、便秘を助長してしまうこともありますから、常に便の状態を確認しながら食事内容を調整していくほうが賢明でしょう。

さらに最近では便秘改善についての研究が進んでいますので、その紹介に移りましょう。

ブロッコリースプラウトに含まれるスルフォラファン・グルコシノレートに便通改善作用

抗酸化作用を高める働きを持つ「スルフォラファン・グルコシノレート」を含むブロッコリースプラウトは、スーパーで手軽に購入できます。

最近の研究では、喫煙や紫外線、日々のストレスなどによって体内で過剰に発生した活性酸素が、細胞やDNAを傷つけ、疾病や老化など様々な障害を引き起こす「酸化ストレス」が、腸や筋肉の組織細胞にもダメージを与えることで腸の機能を弱め、便秘を引き起こすことが明らかになってきました。

この背景をふまえ筑波大学の谷中昭典教授は、体内の抗酸化作用(酸化ストレスを防ぐ作用)を高める働きを持つとされるスルフォラファン・グルコシノレートを含むブロッコリースプラウトの摂食が便通改善作用を持つことを、ヒトを対象とした臨床試験で明らかにしました。参1)

軽い便秘傾向のある男女48名を2グループに分け、1グループにはスルフォラファン・グルコシノレートを高濃度に含む発芽約3日目のブロッコリースプラウトを、別のグループにはスルフォラファン・グルコシノレートを含まないアルファルファスプラウトを1日20gずつ4週間食べ続けてもらい、便通への影響を調査。その結果、ブロッコリースプラウトを食べたグループで便通スコアに低下傾向が見られ、便通が改善することが示唆されました。

ブロッコリースプラウトは、スーパーなどで手軽に購入ができるようになっていますから、この研究結果は、便通改善のための新たな手段として念頭に置いておく価値がありそうです。そこでここからは、ブロッコリースプラウトをどのように食事に取り入れていくか、おすすめの使い方をご案内したいと思います。

生野菜と一緒に加えるのがポイント

レタスと一緒にブロッコリースプラウトをたっぷり挟んだハンバーガー

ブロッコリースプラウトは発芽野菜の中でも苦みなどのクセが少ないため、レタスなどの生野菜と同じような感覚で料理に加えることがポイントです。例えば、ハンバーガー。レタスと一緒にたっぷり挟むだけで、いつものハンバーガーにシャキシャキ食感が加わり、おいしく食べることができます。作るのが面倒な人は、市販のハンバーガーをテイクアウトして追加で挟んでも良いでしょう。他のメニューに活用する場合は、レタスやキュウリ、トマトなど生野菜を使うときに一緒に加えること。サラダやサンドイッチ、冷やし中華やざるそばの薬味、定食の付け合わせを考えるときに意識的に取り入れていくだけで活躍の場が広がります。

ブロッコリースプラウトには、他にも肝機能改善や乾燥肌改善の効果も

ブロッコリースプラウトに含まれる「スルフォラファン・グルコシノレート」には、便通改善の他、肝機能参2-4)や乾燥肌の改善参5-6)など様々な研究報告が上がっています。これらの効果を期待するためには無理のない継続摂取がカギを握りますから、大きく食事内容を変えるのではなく、いつもの料理に無理なく“ちょい足し”していく感覚ではじめてみてはいかがでしょうか?

■ 参考サイト・文献

「厚生労働省」統計表

特定非営利活動法人日本トイレ研究所「小・中学生の排便記録2023」

『ちょっと具合のわるいときの食事』(婦人之友社、監修 日野原重明、東畑朝子)

『あたらしい栄養学』(高橋書店、監修 吉田企世子、松田早苗)

参1) Akinori Yanaka
Daily intake of broccoli sprouts normalizes bowel habits in human healthy subjects
Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition Volume 62 Issue 1 Pages 75-82(2018)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcbn/62/1/62_17-42/_article

参2) Kikuchi, M., et al. (2015). "Sulforaphane-rich broccoli sprout extract improves hepatic abnormalities in male subjects." World J Gastroenterol 21(43): 12457-12467.

参3) 菊池 真大, 青木雄大., 相澤 宏一, 菅沼 大行, 西崎 泰弘 (2018). "健康成人の肝機能に対するブロッコリスプラウト抽出物含有サプリメントの有効性検証 - 多施設無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験 -." 薬理と治療 46(1): 81-95.

参4) Satomi, S., et al. (2022). "Effects of broccoli sprout supplements enriched in glucoraphanin on liver functions in healthy middle-aged adults with high-normal serum hepatic biomarkers: A randomized controlled trial." Frontiers in Nutrition 9.

参5) 大野智弘, 須., 吉村公一, 毛利麻里, 中田秀二 (2018). "乾燥肌の健常な成人女性におけるグルコラファニン含有ケール青汁の肌状態に対する有用性―ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験―." 薬理と治療 46: 243-255

参6) Tomohiro, O., et al. (2018). "Continuous Ingestion of Kale Containing Glucoraphanin Improves Skin Condition inHealthy Japanese Adults with Skin Dryness―A Randomized, Double—blind, Placebo—controlled,Parallel—group Study―." Japanese Pharmacology and Therapeutics 46: 1883-1893.

<著者>

スギアカツキ
食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。在院中に方針転換、研究の世界から飛び出し、独自で長寿食・健康食の研究を始める。食に関する企業へのコンサルティングの他、TV、ラジオ、雑誌、ウェブなどで活躍中。

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